外来における「お待たせしました」の効力

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「お待たせしました」の効力

外来をしていると、時折どうしても予約時間通りに診察できない患者さんが発生してしまいます。

できるだけお待たせすることのないように、あの手この手を尽くしているのですが、それでもどうしても結構な待ち時間を発生させてしまうことはあります。

自分はそんな時には「お待たせしてしまってすみません」などと第一声で言うようにしています。

そうすると、ほとんどの場合、待たされて少しイライラしている方でも、表情の強張りがすっと取れて、「いやいや、いいのよ」なんて言ってくださることが多いです。

もともと待つことに慣れていて、(少なくとも表面上)あまりイライラはされていなくても、実はイライラしておられるかもしれませんし、

本当にイライラしていなかったとしても、「お待たせしてすみません」の一言があるだけで、気持ちよく思ってもらえるんじゃないかと思うので、言うようにしています。

言わないと怒りを加速させる可能性はありますが、言って悪い方向にいくことはまあないと思います。

振り返ってみると、外来を始めたての頃は余裕がなくて「お待たせしました」が言えていなかったこともあったと思います。

ただ、そんな時の患者さんの表情は曇りが取れないというか、不満を抱えたままの感じがあって、それを見てすぐに謝罪したような気がします。

それ以来、ちょっとでもお待たせしたら「お待たせしてしまってすみません」と言うようにしています。

「お待たせしました」が何故良いか

こんなことちゃんと考えることもなかったですが、では、何故「お待たせしました」と言うと良いのか。

一つには、「お待たせしました」と言われると、「待たされていることをわかってくれている」と実感できますし、

そして「すみません」の一言があれば、「それに対してちゃんと謝罪してくれた」という感情になるからだと思います。当たり前ですが。

ただでさえ、疾患のために病院に来院され、不安な気持ちでおられる方も多いでしょうから、それに加えて待たされて、挙句待たされたことに対して一言も言及されない、となると、怒りを買うことになるのは至極当然とも言えます。

自分は患者としてあまり病院を受診する機会はないですが、きっとそうなんじゃないかなと思います。

思えば、自分が飲食店なり、どこかお店を利用する時も待たされる側になったら、同じことを感じると思います。

結構待たされても、愛想よく「お待たせしました」と言ってもらえたら一瞬で待たされたことなど忘れて、「気持ちの良い店員さんだな」と思うでしょうし、その対応ひとつでむしろそのお店のことをさらに好きになってしまう可能性すらあります。

考えてみると、「待たされたこと」そのものに対して怒っている場合もあるとは思いますが、それよりも「待たせたことに対して謝罪の一言もないこと」に対して怒っている場合も結構あると思います。

病院の当たり前は世間一般の当たり前じゃないこともしばしば

この「お待たせしました」を言ってもらえるか否かに限らず、

何と言うか、一般の社会だと当たり前のことでも、病院では行われていない、ということはまだまだ他にもたくさんあるように思います。

横柄な態度を取られたり、「なんでそんなことになるんだ」と思わされる機会も多いんじゃないでしょうか。

他のサービス業だったら一瞬で廃業に追い込まれるレベルの対応をしているところを時々目にします。

小さなクリニックなどは接遇の質が存続可否にダイレクトに関わってくるという危機感からか、そんなことはないことが多いですが。大学病院とか、目も当てられないほどにひどかったです。

(もちろん、一部素敵な対応をしている方もいましたが)

ではなぜ病院だとこんなことになってしまうのかと言うと、一つにはやはり、医師と患者さんの間で、医療に関する知識や経験に関して圧倒的な情報の非対称性があるからだと思います。

もちろん、医療に限らず売り手と買い手の間には情報の非対称性は存在するものでしょうが、やはり医療の世界においては、その傾向は顕著だと思います。

それ故、多少横柄な態度を取られても、ぐっと堪えて言うことを聞くしかない、という部分もあるのかもしれません。

殿様気質と言いますか、そういった部分があるのだと思います。

しかし、時代はどんどん変わってきています。

治療方針に関しても、パターナリズムの時代からなんでもちゃんと説明して「インフォームドコンセント」を取得するようになっていますよね。

なので、それよりもうちょっと手前の、「待たせたら謝る」とか、病院が、気持ち良く過ごせるような場所になっていったら良いなと思います。

なぜ「お待たせしました」を言わないのか

ここで、なぜ「お待たせしました」を言ってもらえない、ということが起こるのか考えてみます。

それは、だいたい、以下のような理由からなんじゃないかと思います。勝手な推測ですが。

・(医師が)そもそも悪いと思っていない。「病院なんて待って当然」だと思っている。むしろ「忙しい中診てるんだから感謝してほしい」と思っている、など。

・悪いとは思っているが、余裕がなくて言えなかった。

・悪いとは思っているが、プライドが邪魔して。

こんな感じでしょうか。知りませんが。

医師としての腕だけでなく、こういった部分も大事なんだろうと思います。

おわりに

今回は「お待たせしました」の効力の話に始まって、気が付けば「こんな病院は嫌だ」だったり「こんな病院が良い」という話になっていましたが、今日はこの辺で終わりにしたいと思います。

幸い、私のこの記事がアップされるのを待ち望んでおられた方はいなさそうですので、「お待たせしました」と言う必要はなさそうです。

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