外来をしていて、患者さんからの質問にしっかり答えられたり、うまく説明できたりして、
患者さんが明らかにすっきりとした、晴れやかな表情で診察室を出て行かれるのが好きです。
そんなことがあると、外来冥利に尽きるというか、嬉しく思います。
「若いのにしっかりしてるのね。前の先生はあんまり説明してくれなかったけど、わかりやすいわ」
とか言ってもらえたこともあって、それはそれは嬉しかったです。
自分が医師をやっている意味は何か。自分のUSPを考える。
よほどの凄腕ドクターでない限りは、医師のやっていることというのは、「日本で自分にしかできない」という類のものではないでしょうし、
同じ科の医師であれば、できることがほとんどだと思います。
ただ、説明の仕方やその伝え方だったり、患者さんが外来中や外来後に抱く印象は、対応をした医師によって様々です。
自分は医師としての王道のキャリアというか、いわゆる本流からは外れたので、
エビデンスを発信したり、最先端の知見を打ち出したり、ということはこのままいくとなさそうです。
(もちろん、新たな知識や知見を吸収する、ということはしていきます)
医学的な知識や経験の面で、「自分にしかできないこと」というのはあまりないかもしれません。
だからこそ、それ以外の部分で、「自分にしかできないことはあるのか?」と時々考えたりします。
その一つの答えの候補(あくまで候補)としては、「説明の分かりやすさ」だったり、「ちゃんと痛みに寄り添ってくれる感」などを挙げてみたいと思います。
まあ、現時点ではまだまだだと思っているので、今後上記のような点が自分の強みになっていけばいいな、という期待も込めてですが。
ちなみに、マーケティングの世界だと、こういう他者と差別化できる自分の強みは、USP(Unigue Selling Proposition)と言います。
医師として、自分にとってのUSPは何か、を考えてみることは、市場における自分の価値を客観的に考えることにつながります。
10〜20年後には医師が余っているかもしれない日本において、
自分に足りないもの、あるいは、自分の強みや、今後の生存戦略を考える上でも役に立つはずです。
質問の裏にある潜在的なニーズにも応えたい
もう一つ、外来で意識していることがあります。
それは、単に質問に答えるだけでなく、「どうしてその質問をしたのか?」という質問の裏にある意図や背景を汲み取りたい、ということです。
例えば、「この薬ってこういう飲み方でもいいんですか?」という質問があったら、とりあえずの回答としては、YesかNoで答えることになりますが、
「もしかしたら飲みにくいからこういう質問をしているのかもしれない」と考えて、それに応じて飲みにくさを尋ねたり、状況によっては、代替薬などがないかを検討したりしています。
他にも、「この説明をしたらこういうことも気になるかな」という患者さんが抱くであろう疑問や懸念を先回りして説明できたらな、とも思っています。
「今日の僕の説明、どうでしたか?」と患者さんに聞くわけにはいきませんから、直接のフィードバックを受けることはできませんが、
そこは、表情やリアクションから読み取っていきたいと思います。
外来は難しい。だからこそ面白い。
後期研修医になって、外来を始めたての頃は、治療や検査を医学的にいかにうまく勧められるか、失敗しないようにできるか、ということに必死でしたが、
最近では、そういった医学的な部分だけでなく、「どうしたら患者さんに総合的に満足してもらえるか?」というところも視野にやっています。
なかなかうまくいかないこともあり、つくづく外来の難しさを痛感する日々ですが、だからこそ面白いとも思えます。
簡単に達成できることは面白くないですし。
他の先生が外来でどういう工夫をされているのか、というのも気になるところですが、今日はここまでとさせていただきます。