こんな当たり前であるはずのことが、現場ではあまり意識されていない気がします。
何ででしょうか。
(もちろん全員ではありませんが、)患者さんの中には、「医師は何でもしてくれる」とか、「医師には何言っても大丈夫」みたいに思っている方もいますし、
病院によっては、看護師からもそのように思われれているところもあります。
もちろん、仕事の範囲としてやれることはやりますが、これは明らかに度を超えてるんじゃないかな、と思うこともしばしばです。
当直制でなく、担当医制の病院で働いていた時は、医師は「定額制で24時間365日電話かけ放題パック」状態でした。
目次
人間らしい生活を送れない日々
前述の通り、医師サブスク状態の病院で働いていた頃は、人間らしい生活は送れませんでした。
人間らしい生活って何だ、という話ですが、休みをちゃんととったり、夜はちゃんと寝る、とかそのレベルの話です。
早く帰りたくても、遅くまで仕事をせざるを得ないほどの業務量があり、
やっと帰ったと思ったら、寝ていても頻繁に夜中に電話で起こされる。
土日も丸一日休めることはほとんどない。
(年間に数えるほど)
おまけに当直もあるし、寝当直でもない(まあ、これは業務の範囲内なので仕方ないですが、当直自体人間らしい生活からはかけ離れています)。
仕事以外の自分の時間、というのはほぼ取れませんでした。
体力的にもしんどいので、精神的にも余裕は徐々になくなっていきました。常にギリギリ、そんな感じでした。
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医師は聖人君子たれ?
それでも、「医者なんだからそれぐらい当たり前でしょ」みたいなことを思っている人って、一定数いると思いますし、実際、そう感じてきました。
自分も学生の頃は「そんなものかな」、と思っていましたが、実際に働き出して、その生活を経験すると、「この生活を続けることはできない」と確信しました。
そして、「医師である前に一人の人間なんだから、人間らしい生活させてよ」って言っちゃいけない雰囲気みたいなものも感じます。タブー扱いです。
医学部の頃から、「医師とはそういうものだ」ということを”教育”されます。
なんだったら、「すべてを犠牲にしてでも、そうやって身を粉にして働くことこそが美徳だ」、と言わんばかりの勢いでした。
医師に必要な倫理観を教え込む、という名目で、どんな環境でも文句を言わないように、思考様式を”矯正”していくのです。異分子は極力排除されます。
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「こっちは病人なんだから」
「相手は病人なんだから」
と言われてしまうと、対応するしかありません。
そうして、どこにも吐き出せない感情を抱えて生きている医師がたくさんいると思います。少なくとも自分はそうでした。
飲食店とかで、「こっちは金払ってるんだぞ!」と理不尽な要求をしているクレーマーみたいな人っていますよね。
それと同じとまでは思いませんが、病院で働いていると、それと近しいようなことを言われることもたまにあって、「何だかなあ」と思わざるを得ない時も正直あります。
医師全員が聖人君子である、というのは難しいと思います。
むしろ、そうでなくても、しっかり持続していけるシステムを構築していくしかないと思うのですが、しばらく難しいだろうとも思います。
ドラスティックに物事を変えようとすると必ず反対勢力がいますし、
結局、今の体制からは大きくは変わらず、ずるずるいくんじゃないかと思います。残念ですが。
一つ誤解してほしくないのは、こちらも、医師として、患者さんにできる限りのことはしたい、と思っているということです。
ただ、ろくに休みもなく、人間らしい生活すら送れていない状況下で、それを続けることは難しいです。一部のスーパーマンみたいに体力・気力のある人じゃないとできません。
そういう先生もちょくちょくいますが、みんながみんなスーパーマンではないので、スーパーマン頼りの体制ではいずれ破綻することになると思います。
働きすぎで(医師が)潰れてしまったら元も子もありません。
潰れてしまわないように、ってことで医師の働き方改革に関する議論があったようですが、どうも医師だけは特別のようですしね。他の職業の倍くらい体力がある、と見込まれているようです。
(まあ、本当はそんなことはないと皆わかっていても、人手が足りているわけでもないので、そうするしかなかったんでしょうが)
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おわりに
時代の流れ的に、身を削って働くことを辞める人が増えてきています。
過渡期はしばらく続くと思いますし、多くの医療者が人間らしい生活を送れるようになるまでにはまだまだ時間がかかると思いまが、
しんどかったら、医師とて一人の人間なのですから、自分の身を守るためにも、一度しっかり休むなり、環境を変える、ってことを考えてみてもいいんじゃないかと思います。余計なお世話かもしれませんが。
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