卒後4年目でケースレポートを初めて書いた時の話【流れ・メリットも】

ケースレポートを書く医師

私は、ケースレポート(症例報告)を卒後4年目の時に初めて書きました。

今回は、その時のことを振り返って、これから英語でケースレポートを書くことを考えている医師の先生に向けて、経験をシェアしていきたいと思います。

実際のケースレポートを書く際の流れや、ケースレポートを書くメリットについても書いています。

目次

ケースレポートを書くに至るきっかけ

ケースレポート

医師になってからというもの、

「なんとなくケースレポートは書いたほうがいいのかな」

「機会があったら書くのかな」

ぐらいに漠然と思っていた私ですが、ケースレポートを書こう、と思うに至るきっかけがありました。

それは、卒後4年目の春の学会でのことです。

卒後3年目より後期研修医になり、専門科での研修を開始していた私は、卒後4年目の春の学会で、症例報告のポスター発表をすることになりました。

3年目の時に担当した症例が報告する価値のあるような症例だったので、その症例をポスターにしました。

学会中のポスター掲示期間のうち、2時間くらいポスターの作成者がポスター付近に待機しておき、訪れた人から質問があったら受け付けたりディスカッションをする、という時間がありました。

その2時間の間に、数十人が自分のポスターを見てくれたり、10人くらいのドクターが写真を撮ってくれたりしていたのは嬉しかったのですが、期間中すべて含めても、自分のポスターを見てくれたのは100人か、せいぜい200人くらいだったと思います。

そして、その学会が終わればそのポスターは誰の目にも触れる機会がありません。

せっかくあれだけ時間をかけて作ったポスターなのに、学会のたった3日で終わりなんだ、そう思うとすごくもったいないなと思いました。

この経験を経て、

せっかくだったらケースレポートとして形に残す方がいいな。というか、残さないとどれだけ頑張っても意味がなくなってしまう

と思うようになりました。

ケースレポートにふさわしい症例との出会い

ケースレポートの症例

そんな気持ちを持ちつつ病棟で業務をしていると、間もなくケースレポートにできそうな症例を担当する機会がありました。

これは、たまたま巡り合ったとも言えますが、日頃から「ケースレポートにできそうな症例はないか?」とアンテナを張っていたことも寄与したという部分もあったと思います。

人によっては、「すべての症例がケースレポートになりうる」ということを言っている人もいるようですが、初心者のうちは、ケースレポートにするのは誰の目にもわかりやすい珍しさや非典型的な部分がある症例の方がフィットするのではないかと思います。

ケースレポートを書く時期について

ケースレポートを何年目で書くか

私の場合は、卒後4年目でケースレポートを書きましたが、決して早い方ではないと思います。

標準くらいでしょうか。

早い人は研修医のうちだったり、卒後3年目でもう書いている人はいますよね。

英語でケースレポートを書く作業・流れ

ケースレポートを書く流れ

ケースレポート書くと決まれば、あとは地道に作業を重ねていきます。

ケースレポートを書いたことがないうちは、完成までの道のりははるか遠いように思えますが、一つ一つ分解して、順番にこなしていけば、案外何とかなります。

以下、私がどのようにケースレポート作成を進めていったか、ざっくりと各段階について書いていきます。

症例選択

日々診療している症例の中から、ケースレポートにできそうな症例を見つけます。

その目で診療していると、適した症例は意外と見つかると思います。

また、可能なら患者さんが入院されているうちに同意書など取得しておけると、後々スムーズです。

ケースレポートの方向性を決める

症例が決まったら、ケースレポートの方向性を決めていきます。

ありきたりなメッセージでは論文にする意義が乏しいですから、

「これが非典型的なんです」

「こういった発症の仕方はこれまで報告がありません」

「こういう経過を辿ったのは非常に珍しいので報告します」

など、何らかインパクトのあるメッセージを打ち出せるといいですね。

投稿規定の確認

ジャーナルの投稿規定

あとは、投稿しようと思っているジャーナルの、投稿規定を確認します。

「ちょっとくらい投稿規定を逸脱しても大丈夫だろう」と思うかもしれませんが、こういう規定は遵守すべきです。

規定を逸脱していると、投稿してもろくに読んでもらえずにrejectになり得ます。

下調べ

ケースレポートを書く準備

方向性が決まったら、書く作業に取り掛かってもいいのですが、私の場合は、完成までの過程をイメージするために、ネットで他のドクターがケースレポートをどのような形で執筆していったかをリサーチしました。

同時に、使える表現を調べたり、投稿を予定しているジャーナルの掲載論文はどんな感じかも調べておきました。

ケースレポートに関する本もいくつか買ってざっと読みました。

医学論文の書き方に関する書籍としては、上の2冊を参考にしました。

英語表現に関しては、↑こちらの本をパラパラと見てざっと頭に入れました。

また、↑こちらの本はカバーレターの作成や査読コメントへの返答に関して、実例やテンプレートがたくさん載っているので実用的で良かったです。

英語でケースレポートを書いていく

英語で書かれたケースレポート

下準備が終わったら、早速ケースレポートを書いていきます。

どこから書いてもいいとは思いますが、まずは症例報告部分を書くのがいいと思います。

それができたら、考察を書いたり、abstractを書いたりした方が進めやすいと個人的には考えています。

そして、実際に書き始めると、英語で書くことの大変さを痛感しました。

普段日本語だと苦もなく書けていることが、英語ではどう表現するんだろう、ということが何から何までわかりません。

使える表現をネットや本で調べたり、他のケースレポートを参考に、一文一文書いていきます。

投稿するジャーナルにすでに掲載されているケースレポートを参考に、どういった表現が使われているかを確認しました。

あとは、Google Scholarで「この表現使えるかな?」みたいな確認はよくやりました。

正直、最初はかなり大変でした。

一文書くのにも時間を要し、途方もない道のりのように思えましたが、やっていくうちに徐々にゴールが見えてきます。

また、Referencesの部分はEndnoteを使って作成しました。

Endnote basicなら無料で使用できます。

途中で参考文献の順序が変わったりしても、自動で番号を振り直してくれたりするので、便利です。

Figure・Tableの作成

ケースレポートのFigureとTable

本文の他に、必要に応じてFigureやTableを作成します。

経過を示すFigureに関しては、もし同じ症例で事前に学会発表などしていれば、それを英語に直すだけなので、それほど手間がかからないかもしれません。

とは言え、ケースレポートにするとなると、フォントや間隔など、表記の部分でも見る人にとって違和感のないように、細かなところにまで気を配る必要が出てきますので、それなりに時間を要します

Figureの作成には、私は『Photoshop』を使いました。

指導医とのやり取り

ケースレポートを書くための指導医とのやり取り

だいたいの草稿ができたら、指導医にチェックを依頼します。

いくつかの修正箇所や、「こうした方がいいんじゃない?」という意見があると思いますから、それを反映しつつ修正します。

このやりとりは何往復も続くこともあるでしょう。

投稿

ケースレポートの投稿

完成したら、提出書類などを準備して、投稿作業をしていきます。

投稿するまでに、「カバーレター」も準備しておく必要があります。

先輩が過去に投稿したものや、本やネットに参考例はたくさんありますから、それらを参考にしつつ、カバーレターも作成しておきます。

投稿するジャーナルのWebサイトにアクセスしたら、案内を読みつつ、ネットで投稿します。

返事待ち

投稿が終わったら、返事を待ちます。

私の場合、投稿から1ヶ月くらいでReviseの返事が来ました。

※もしRejectだったら、他の投稿先を探します。

ジャーナルが変わる場合は投稿規定に沿うように、適宜形式を変更していきます。

その際、Referenceの形式が変わることが多いと思いますが、Endnoteならスタイルの設定を変更するだけで、自動で全て形式を変更してくれます。

Revise

Reviewerのコメントに基づき、論文を修正していきます。

私の場合は、figureの追加や、本文の修正を行いました。

そして、「ここをこういう風に直しましたよ」という文書も準備して、一緒に再提出します。

アクセプト

ケースレポートのアクセプト

再投稿から2ヶ月後、アクセプトの返事が来ました。

私はCorresponding authorではなかったので、投稿後の細かいやり取りなどはコレスポの先生にやっていただきました。

その後、晴れてケースレポートがジャーナルに掲載されました。

ケースレポートを書いたことで実感したメリット

ケースレポートを書くメリット

ここからは、ケースレポートを書くことのメリットについて考えてみたいと思います。

メリット①:医学の発展に貢献できる

まず第一にはこれを挙げておきます。

たかがケースレポートですが、されどケースレポートといった感じで、ケースレポートとして形に残しておけば、世界中の医師がそれを参考にできる可能性があり、その結果地球の裏側で同じような症状に苦しむ一人の患者さんが救われるかもしれません

メリット②:医学論文執筆への抵抗がなくなる

医学論文を初めて書く場合、まずはケースレポートから始める人が多いと思います。

やってみたら「なんだ、意外と書けるじゃん」ってなると思いますし、

一度でもケースレポートを書いておけば、それを足がかりにケースシリーズや臨床研究や基礎系の論文などの執筆への心理的ハードルがぐっと下がってくると思います。

・構想を練る

・論文を書いて、指導医に投げては修正を繰り返す

・TableやFigureの作成

・投稿する

・Revise

・再投稿

・アクセプト

・その後のやり取り

といった一連の流れをケースレポートで経験しておけば、次からはかなりスムーズに論文を執筆・投稿していけると思います。

メリット③:臨床能力の向上につながる

ケースレポートを書く医師

ケースレポートを書く経験を通じて、一つの症例をしっかりと整理し、考察することができます。

・どういった経過を辿ったのか

・どういった部分が非典型的だったのか

・既報との違いはどうか

・文献的にはどのようなことがわかっているのか

・どうしたら良かったのか

といったことをじっくり腰を据えて考える。

忙しいと一例一例吟味する時間がなく、症例が過ぎ去っていってしまう、ということもあるかもしれませんが、ケースレポートを書くことで、一つの症例から得た学びを確実に自分の血肉とすることができます

また、日々診療していく上でも、頭の中で経過表を描きながら診療したり、文献的考察を加える癖がついたりします。

そして、このことが、今後も診療を続けていく上で、プラスに働くことは言うまでもありません。

メリット④:英語の能力が向上する

ケースレポートにより向上した英語力

ケースレポートを英語で書くのは、慣れないうちはとても大変です。

一行書くごとに使える表現を調べたり、時間がかかります。

しかし、そうして身に付けた英語力は確実に自分の力となります

また、英語が書ける人は瞬発力さえ備えればスムーズに話せるようになりますし、英語でオーラルでの発表なども苦ではなくなってきます。

論文を読む時も、「この表現は使えるな」と自然と書き手側の目線でも読むようになってくると思います。

メリット⑤:実績になる

ケースレポートを書くことで得られた実績

ケースレポートであっても、論文として形に残しておくことで、勤務先を変える際など、他者にわかりやすい実績を提示することができます

もちろん、論文を書けるからいい医者だ、ということは必ずしも言えませんが、「論文を書けるくらいの能力があること」は形として示すことができます。

例えば、論理的な思考力や、説明力、論文を完成させることのできる仕事力や忍耐力などですね。

おわりに

ケースレポートを書くこと

今回は、私が初めてケースレポートを書いた時の一連の体験談と、ケースレポートを書くメリットについて書いてきました。

これからケースレポートを書こうとされている先生方の参考になりましたら幸いです。

最後に一つ言っておくと、ケースレポートは、書きたい人は書けばいいと思いますが、書きたくない人は無理してまでは書く必要がないと思います。

特に1本目は莫大な時間と労力を要しますので、どうしても書きたいという強い動機がなければ、完成させるのは難しいと思います。

また、完成させられたとしても、嫌々書いていいことはありません。時間は有限です。

書きたくない人にとっては、論文を書いていなかったらもっと他の有意義なことに時間を使えたかもしれませんし、書きたい人だけが書けばいいんじゃないかと個人的には思います

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