現在医局に所属しているものの、
医局を辞めたい
と思っている方も多いのではないでしょうか。
しかしながら、医局を辞めるというのは、大きなエネルギーを必要としますし、現状維持バイアスも手伝って、なかなか決断できずにいる方もいらっしゃると思います。
かくいう私も、かつて医局に所属していましたが、あまりの奴隷っぷりと未来の見えなさに、
自分の人生本当にこのままでいいのだろうか?
このままここにいたらあの人たちみたいに死んだ魚の目をした人間になってしまうのではないか?
それでいいのかい?
よくないのかい?
どっちなんだい!(©︎某筋肉芸人)
と疑問を抱き、ある時思い切って辞めました。
もちろん、実際に辞めるまでにはたくさんの葛藤がありましたが、一つ一つの問題点や検討事項に対して思考を進めれば進めるほどに、自分にとっては「医局を辞める」のが最善の一手だと思えてなりませんでした。
そして、晴れて脱獄退局を果たしました。
医局を辞めることを教授に告げ、医局棟を出た私が『ショーシャンクの空に』状態になったことはここだけの内緒です。
(※ピンと来なかった方は「ショーシャンクの空に」でパッケージを検索してみてください)
医局を辞めてからも、この上ないほどにシャバの空気を楽しんでいます。
心の底から「医局に所属していたい」と思える人は別として、少しでも「医局を辞めたい」と思っておられる先生に向けて、塀の外にも世界があるんだということを知ってほしい。
最終的に医局を辞めるのか辞めないのかは個々の先生のご判断にお任せすることしかできませんが、医局の外の世界のことを知った上での判断なのか、知らずに医局に留まることを選択「させられている」だけなのか、この両者の間にはベルリンの壁くらいの大きな隔たりがあると言わざるを得ません。
そんな訳で本記事では、医局を辞めようか悩んでいる先生のために、医局をトラブルなく、円満に辞める方法や、医局を辞める際に気になる諸々を退局経験者の私が、自らの体験談や他に医局を辞めたドクターの話を交えつつ解説しています。
全体の構成としては、前半に私が医局を辞めるまでの心情や辞めた時の実体験、後半に医局を辞める上で気になる諸々について解説している、という形にしています。
医局を辞めた人の話を聞くことのできる機会はそうたくさんあるものではないと思うので、読んでいただいたあなたの参考になるよう、そして、少しでもリアルにイメージをしていただけるよう、解説しています。
本記事が、医局を辞めたくてもなかなか一歩を踏み出せずにいるあなたの背中を押せるような存在となることを願っています。
私が医局を辞めるまで
私が医局を辞めようと思った経緯
医局に所属していた頃は、臨床や研究に忙しく働いており、それなりに得られるものもありました。
具体的には、わかりやすい部分では臨床能力や研究成果・業績がありますが、無形資産に目を向けると
自分は王道で頑張っていて、日々成長しているんだ
という実感(もしくは錯覚)、
このまま行けば将来大きく困ることはないだろう
という一定の安心感(もしくは錯覚)、
細かいところも言えば、
大学の同級生や親などに近況を聞かれた時にも答えに困らない
等です。
ただ、そのメリットを打ち消して余りあるほどに、
医局生活においては、
・自由
・自分の人生の主導権や人権
・時間
・お金(→生きてはいけるが決して豊かではない)
といったものがありませんでした。
それ故、実際に医局を辞めることになる数ヶ月前から、漠然と、
これは奴隷でしかない
滅私奉公しすぎて、自分の時間もないし、自由がない。経済的にも決して豊かとは言えない
このままここにいていいんだろうか?この先に何があるのか?このままここにいたら医局の先輩達あるいは、上層部のようになるんだろう。それは嫌だ
ということを時々考えるようになっていました。
ただ、そういった考えが思い浮かんでは、深く考えないように、そっと心に蓋をする日々でした。
しかしながら、多忙で理不尽で人権のない日々は続きますので、自らの内から湧き出る現状への不満や医局からの脱出願望といった感情は次第に強くなっていき、ある時もはや抑制することができないレベルへと達しました。
そこから医局を辞めるまでは案外早かったです。
辞めることを決断する前に一番懸念されたのは、
医局を辞めても大丈夫なのか?生きていけるのか?
ということでしたが、冷静に考えた結果、
「全然問題ない。長い人生この先もしかすると多少の困難は伴うことがあるかもしれないが、医局という沈みゆく船に残り続けることに比べればはるかにイージーだろう」
という結論に達しました。
そして、医局を辞めることを決意しました。
私の場合は、卒後10年以内、でした。
医局を辞めることを決意してからの段取り
ひとたび医局を辞めることを決めてしまえば、あとは具体的な段取りに移ります。
私の場合は、まずは親に連絡して、医局を辞めることになったことを伝えました。
親の反応としては、
辞めて大丈夫なのか?
と少し心配そうでしたが、大丈夫であることを伝えると、私の意思を尊重してくれました。
ここで念の為言っておくと、親への連絡は気持ちの上ではあくまで事後報告なので、親になんと言われようと医局を辞めるという決意が揺らぐことはなかったと思います。
続いて、教授に連絡する前に、
「教授に何て言って辞めよう」
ということを考えました。
私の場合は本音をそのまま言うと簡単には辞めさせてもらえるような理由ではないと想定されたので、スムーズに辞めることができるであろう理由を用意しました。
このあたりについては、後半で詳しく解説しています。
ここまでくれば、あとは教授に連絡です。
メールで話があること、面談の時間をとってほしいことを伝えます。
もちろん、こちらの候補日時を複数添えて、です。
間もなく返事が来て、すぐに(翌日)面談となりました。
そして、教授との面談
そして、迎えた決戦当日。
私の場合は幸い、教授のキャラクターを考えると、大きくこじれることは考えづらかったものの、それでもスムーズに辞めることができるか、という微かな不安はどうしてもつきまといます。
その不安を、「しっかり準備したから大丈夫」と自分に言い聞かせて振り払うようにして、面談に臨みました。
あまり早すぎても失礼かと思い、教授室を約束の時間の1-2分ほど前に訪れると、教授はすでにウェルカム状態でした。
私は、周りから見て辞めそうな素ぶりはなかったはずなので、もしかすると、この時点では教授は私が辞めると言い出すとは思っておらず、何か研究や進路のことで相談でもあるのか、と思っていたのではないかと思います。あくまで推測ですが。
いざ、面談が始まると、まず時間を取っていただいたことへの感謝を告げ、すぐに本題へと移ります。
結論から申し上げますと、医局を辞めさせていただきたいと思い、お伝えに上がりました。理由としては〜
という形で切り出しました。
理由も含めてシミュレーション通りしっかり説明したところ、スムーズに了承が得られました。
じゃあしょうがないね
という感じで、特に引き止めにあうこともなかったです。
面談自体は15〜20分くらいだったと思います。
これまでのお礼等の挨拶をして、教授室を後にしました。
晴れて自由の身です。
帰り道、(前述の通り)私の心はショーシャンク状態でした。
その後、教授以外にも挨拶をしなければならない人にメールでアポを取り、翌日以降に直接伝えに行きました。
他のドクターに挨拶に行った時には、教授からすでに連絡がいっていたようで、話はスムーズでした。
あとは業務の引き継ぎをどうするか等の相談もして、退局するまでに引き継ぎを行いました。
とまあ私の退局はこんな感じでした。
以下、医局を辞める上で気になる諸々について解説しています。
卒後何年目で医局を辞めるケースが多いのか?
だいたい何年目くらいで医局を辞めるドクターが多いのでしょうか?
何年目で辞めるかは人それぞれ、と言ってしまえばそれまでなのですが、ある程度はパターンがありますので、順番にみていきましょう。
大学院に入る前に辞めるケース
まずは、初期研修を終えて、後期研修から大学に入局したものの、大学病院のやり方や医局の空気が肌に合わずに、早々に医局を辞めるケースです。
大学の同級生に聞いた話ですが、彼の医局では劣悪な環境すぎて毎年1〜3人は大学院に入る前に辞めていくそうです。
大学院に入る前に辞めたからと言っても、何も自分を責めることはありません。
大学に居た期間で大学病院や医局ならではの経験を積むこともできたでしょうし、「何が自分の肌に合って、何が合わないのか」を知ることができたという意味で、大きな前進です。
長い人生山あり谷ありです。
人生100年時代、人生を100kmのウルトラマラソンに例えると、20代〜40代というのはまだまだ20〜40km地点です。
ここで無理してダッシュしてしまっては、怪我をするかもしれませんし、その先バテるのが目に見えています。
無理は続きません。
水が自分の肌に合う川で泳ぎましょう。
また、このタイプの方は損切りが早く、現状維持バイアスに打ち克って合理的な判断をすることができる方なので、この先の人生でも致命傷を負う可能性が低いんじゃないかと思います。
ご自身の生きるセンス、聡明さに自信を持ってください。
大学院を卒業して辞めるケース
これは卒後年次としてはある程度早い段階で辞めるパターンです。
卒後4-6年目で入局、大学院に入り、4年で卒業し、学位/医学博士を取得と同時か1年程度残った後に医局を辞める場合、卒後8-10年目程度で辞めることになるでしょう。
この場合、辞め方や辞めた後の進路にも依りますが、“辞める”というより”卒業”という表現が適切な場合もあります。
もちろん、医局、大学院に入ったものの、諸事情により卒業までは至らずに辞める方も少なからずいます。
卒後15年程度で辞めるケース
卒後15年程度、だいたい30歳代中盤~後半程度で医局を辞めるケースもあるでしょう。
この年代になってくると、開業を考えたり、結婚や子育て、親の介護など、ライフイベント関連の理由により辞める先生もいます。
臨床医として
このまま大学病院に居ても成長はないな
と閉塞感を感じることもあるかと思います。
もしくは、アカデミックな世界に身を置き、必死に研究を頑張ってきは来たものの、なかなか目覚ましい結果は出ず、教授や講師など出世を諦める方が出てくるのもこの時期でしょう。
もちろん、これまで見てきた3つの場合に当てはまらない方もいるとは思いますが、比較的多いのは上述の3パターンかと思います。実際耳にするのも10年以内のケースが多いです。
医局を辞めることを伝えるタイミングは?何月頃に言うべきか?
まず、医局を辞める時期(何月まで勤務するか)についてですが、
基本的には年度末の3月末までで辞める、というパターンが一般的だと思います。
そして、医局を辞めることを医局に伝えるタイミングですが、半年程度前が一つの目安になると思います。
もし過去に医局を辞めた方が周りにいれば、聞いてみるのもいいと思います。
引き止めにもあわず、スムーズに退局の話が進んでいったとしても、医局側としては翌年度の人員確保や業務の割り振り、引き継ぎに時間を要します。
また、中には辞める方向で医局と合意に至るまで、数ヶ月かけて面談を重ねるケースもあるでしょう。
医局としては「どうしても辞めてもらいたくない」という場合ですね。
そのため、時間的に十分余裕を持って、半年から1年前には伝えた方がいいと考えられます。
もう半年を切ってしまっている場合は、早ければ早いほうがいいでしょう。
医局に辞めることを伝える時期を考える上で、
「自分の場合は引き止め交渉が長期化しそうかどうか」という要素も一つ考慮に入れるとよいかもしれません。
もちろん、引き止め交渉が長期化することを望む方はいないと思いますので、できるだけ一発で辞めることへの了承をもらえるように、十分な理由を用意しておく必要があるでしょう。
どんな理由で辞めるにせよ、辞められる側の事情も配慮することが、円満に退局するためには重要と言えそうです。
「立つ鳥跡を濁さず」でいきましょう。
辞めることを伝える際、誰に言うべきか?
結論から言うと、いきなり教授に伝えることをおすすめします。
私も、まず教授に伝えました。
一番良くないのは、同僚や年代の近い先輩、後輩に「今度医局辞めようと思っててさ」とポロッとこぼしたのが、回り回って教授や医局長の耳に入るパターンです。
いくら気心が知れていようと、「医局を辞める」というような大事な話は、内に秘めておいた方がいいです。
本記事をお読みのあなたもご経験あるかと思いますが、こういった類の噂話は光の速さで回ります。
「絶対に誰にも言わないで」と言っても、リスク管理上
「絶対に」話は拡散されると思った方がいいです。
気が付いた時には医局員ほぼ全員が知っている、という事態になりかねません。
さらに、本人が言った言葉とニュアンスが曲げられて伝わってしまう可能性もあります。
それに、「○○先生が医局を辞めたがっているらしい」という話を間接的に聞かされた教授や医局長の立場で考えてみましょう。
直接本人から告げられる場合と比べて、明らかに印象が悪いですよね。
そして、噂話を耳にしてから、実際に本人の口から告げられるまでの間、色々と邪推してしまうでしょうし、場合によっては冷遇を受けることもあるかもしれません。
「誰かに相談に乗ってもらい」という気持ちはよくわかりますが、内容が内容ですので相談するのは控えた方がいいと思われます。
上述の通り拡散されるリスクもありますし、(辞めたい理由が医局の体制に不満がある場合、)相談を受けた側も結局、何か事態改善のために動いてくれる可能性は高くはありません。
仮に、例えば医局員間の不公平感の是正のためなど、誰かが一緒に動いてくれたとしても、もしそれが教授や他の医師等の大勢の意向に沿わない動きであった場合は、阻害される可能性も十分あります。
そして、一緒に動いてくれた医師も「自分の身が危ない」と判断した場合には手を引く、ということも最悪の場合ありえるでしょう。
医局を辞めることを伝える方法は?直接?メール?
では、医局を辞めることを伝える際、教授にはどのような手段で伝えるとよいでしょうか。
結論としては、
メール等で面談のアポを取り、後日直接面談の際に伝えるのがいいでしょう。
※中には、「できれば顔を合わせずにメールで済ましてしまいたい」という考えの方もいるかもしれませんが、医局を辞めるというのは大事な話ですので、直接伝えるのがいいと思います。
メールで辞めたい旨を伝えても、結局は「一回直接話しましょう」となるでしょうし、「こんな大事なことメールで言ってくるなよ」と悪い印象を抱かれる可能性もあります。
面談日時の調整については、事前にメールでお話がある旨を伝え、候補日や時間帯を複数提示して、教授からの返信を待つ形がいいかと思います。
教授の外来や会議など、可能な範囲で予定を把握した上で、なるべく後に予定のないところを狙って面談日時を提案するといいでしょう。
後ろに予定があると話が途中になってしまったり、こちらの話をじっくりと聞いてもらえない可能性が生じてしまいます。
面談の際の服装
これはケースバイケースで各自無難なものを選択していただければ、と思いますが、私は普段通り〜ややフォーマル気味(オフィスカジュアルくらい)な服装でいきました。
医局の風土にもよりますが、私の場合はわざわざスーツを着ていくほどではないと感じたからです。
医師が医局を辞める理由は?
医師が医局を辞める理由は人それぞれですが、代表的なものを挙げると以下のようになります。
・給料が少ない
・激務で体力的に辛い
・人権がない、憲法で保証されているはずの健康で文化的な最低限度の生活を営むことができない
・病気を患ってしまった
・精神的に疲弊した
・時間的自由が欲しい
・開業する
・研究に疲れた
・症例経験を積める病院に移りたい
・教授を諦めた
・結婚や親の介護などで実家に帰る
…など
医局での仕事や生活が辛くて辞める場合もあれば、開業やさらなる飛躍を求めて医局を後にする場合もあります。
その他、ライフイベント関連の理由もあるでしょう。
医師が医局を辞める理由については、以下の記事で詳しく解説しています。
辞めることを教授に伝える際の切り出し方は?言い方はどうする?ちょうどいい理由がない場合はどうする?
「医局を辞めることを教授にいかに切り出すか」は、医局を辞めることを考えている多くの方の悩みの種となっていると思います。
医局を辞める際、最も大切と言っていいのが、辞める際に「伝える理由」でしょう。
円満に、かつスムーズに医局を辞められるかは、「そういう理由だったら仕方ないな」と教授に思ってもらえるか、この一点にかかっています。
ライフイベントなどで実家に帰るなど、実際にしっかりとした、医局に伝えやすい理由がある場合は全く問題ありません。
ただ、体力的、精神的にしんどくて辞めたい場合など、医局に伝えやすい理由がない場合も往々にしてあると思います。
そういった場合は医局に納得してもらいやすい、辞める理由を用意するしかありません。
ちなみに、自分の場合は、事前に相当シミュレーションしていった甲斐もあってか、肩透かしを食うほどスムーズに終わりました。
ここでもし、
しんどいので辞めたいです
などと正直に伝えた場合のことを考えてみましょう。
この場合はなかなか、
そうですか、わかりました
とは言ってもらえないでしょう。
であれば負担を軽くするように何とかするよ
とか、
少し休みを取ってもらっていいから
というようなことを言われることが想定されます。
そうは言われたものの、実際には何も状況は変わらなかったり、体制が多少変わったとしても、あまり意味がない程度の変化しか起きない可能性が高いと思います。
簡単に解決できるような問題でないからこそ、現在そのようなシステムに落ち着いていると考えた方が自然です。
医師の皆様は真面目な方も多いでしょうから、「実際に心の中で辞めるという決断に至った理由」と、「医局に伝える理由」が一致しないことに罪悪感を抱く方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、両者が一致することが望ましいですが、そうはいかない場合もあるので、仕方ありません。
むしろ、「医局を辞めたい」という自分の気持ちに嘘をつき続けることの方がよっぽど良くないと私は思います。
あなたの人生なのですから、自分の気持ちに正直に、心の赴く方向に道を歩んでいけばいいと思います。
「辞める」と伝える際の注意点①:伝える理由はよく考えて
「医局に伝える」辞める理由に関して、当然ですが、容易に嘘とばれるような理由は避けてください。
医局を辞めた後もどこかで同じ科の医師として働く場合は、学会や紹介状の名前、あなたやあなたの名前が辞めた医局の人の目に触れる機会もあるかと思います。
また、知り合いを通じてあなたの辞めた後の情報が元の医局の人に伝わることもありえます。
時には街であなたの姿を目撃されることもあるかもしれません。
医師の世界は案外狭いものです。
ですので、理由を用意する際はよく考えて、整合性の取れるようなものを用意したほうがいいです。
当事者以外からは真偽の確認の取りようがない理由なんかは良いですね。
「辞める」と伝える際の注意点②:一発で決めよう!
もう一点注意していただきたいのが、医局に辞めることを伝える際には、「一発で決める」覚悟を持って面談に臨んでほしい、ということです。
こうこうこういう理由なので、医局を辞めます!
と必ず”断言”してください。
これは、できるようで意外と難しいと思います。
いざ実際教授を目の前にすると怖気づいて、
○○の件では恩もあるしな…
とか、
よく考えたらこういう良いところもあるよな…
とか考えてしまって、はっきりと自分の考えを言えないのは最悪です。
医局に所属しているうちはある程度は忖度が必要だったかもしれません。
しかし、あなたはもう医局を辞めるのです。
教授の顔色を伺っている場合ではありません。
ここは一世一代の大勝負です。
海老蔵さんばりの大見得を切って言っちゃってください。
言い方としても、
できれば辞めたいんですが…
とか
ちょっとご相談を…
というテンションじゃなくて、
辞めます
ときっぱり断言してしまいましょう。
かくいう自分も、「既に決まったことを事後報告しにきました」というテンションで臨み、うまくいきました。
※もちろん、断言はするべきですが、くれぐれも失礼のないようにしてください。
礼節は保ちつつ、主張をしっかりと伝えましょう。
「辞める」と伝える際の注意点③:辞める辞める詐欺はしないこと
上述の「一発で決める」という注意点と近いですが、もう一点重要なポイントとして、
「辞める辞める詐欺をしない」
ということが挙げられます。
辞めることを医局に伝えた際、相手に
もう考えはまとまっていて、それを報告しにきたんだな
意志が翻る可能性はなさそうだ
と思わせることが肝要です。
一度は辞めると言ったのに、
やっぱり続けます
と言ってみたり、
医局からの甘い言葉によって辞めずに続けてしまうこともあるかもしれませんが、そんなことが一回でもあると、次にまた辞めたいと言っても、「また言ってらぁ」ぐらいにしか思ってもらなくなるでしょう。
本気度を疑われてしまいます。
また、「○○という現状を改善してもらえなければ辞めます」と、医局を辞めることを交渉のカードとしてチラつかせる場合もあるかもしれませんが、一度でも辞めなかった実績を作ってしまうと、「あいつはどうせ辞めないから」と軽視されてしまうことになりかねません。
辞める辞める詐欺は禁忌です。
くれぐれも、オオカミ少年になってしまわないように気を付けてください。
「辞める」と伝える際の注意点④:引き止めにあったら?
「辞める」と伝えた際、引き止められなければ無事、退局です。
お疲れ様でした。
そうはいかず、引き止めにあった場合はどうでしょう。
辞めないでほしい
何とか続けてもらえないか
と普段は医局員を雑に扱っていても、
医局員から「辞める」と言われた時だけ甘い言葉をかけられることもあるでしょう。
そんな言葉に惑わされないようにしてください。
それは時に本心かもしれませんが、いてもらった方が「医局にとって」都合がいい、ということもあるでしょう。
少々うがった見方をすれば、
せっかくよく働く奴隷を確保したのだから簡単に辞めてもらっちゃ困る
また新しい奴隷を確保するのは手間がかかる
という思惑もあるかもしれません。
ですので、「辞めます」と教授に言いに行くという状況にまで至った方は、断固として辞めた方がいいと思います。
はっきりとNOを突きつけるのです。
前述の通り、「負担を軽くするから」などと言ってくるかもしれませんが、硬直化しがちな医局という組織において、体制や各医局員の業務量はそう簡単には変えられない場合が多いでしょう。
それに、引き止めも本心からかはわかりません。
中には、「引き止めにあわなかったら自分が必要とされていなかったような気がして辛い」という自己肯定感低めの方もいるかもしれませんが、医局を辞めたいのですから、それでいいじゃないですか。
「惜しまれつつも辞める」というのが一番格好いいかもしれませんが、医局を辞めたい人間にとって、もはやそんなことはどうでもいいです。新天地で評価を築いていけばいいだけの話です。
ちょっとやそっとのことでは動じないだけの覚悟を持って面談に臨んでください。
専門医なしで医局を辞めても大丈夫?
比較的卒後年数の浅い先生や専門医資格をまだ取得していない先生などは、
「医局を辞めたいけど、専門医を取得しないまま医局を辞めてもよいのか?」という点が気になるかと思います。
結論から言うと、個人的には、専門医を取得しないまま医局を辞めても問題はないと思います。
第一に、専門医などという資格のためだけに、辞めたいと思うような環境で勤務を続けるのは何よりも精神的に良くないと思います。
専門医資格を手に入れるために、自分の人生、魂を売るようなものです。
どうしても専門医が必要ならば、大学病院以外にも専門医を取得可能な病院はありますので、そちらで研修を続けて専門医を取得する、というコースもあると思います。
それに、専門医資格取得に必要な症例の一部は大学病院で診療した症例の情報を利用する、という手も考えられます。
この場合、元の医局の教育責任者にはんこをもらわなければいけないことはあると思いますので、こうした場合のことを考えても、円満に医局を辞めることが重要となってくるのです。
また、そもそも、キャリア的に専門医が必要ない、という結論に至る方もいらっしゃるでしょう。
学位/医学博士を取得しないままで医局を辞めても大丈夫?
こちらも気になる方はいると思います。
「学位、医学博士を取得しないまま医局を辞めてもいいのか?」という点です。
こちらも、個人的には、医学博士を取得せずに辞めても問題はない、と思います。
医学博士の存在はアカデミックな世界で生きていくには必要なこともあるでしょう。
ただ、医局を辞めようとしている方にとって本当に医学博士が必要な瞬間はそう多くはないと思います。
あるとしても「公立病院の部長職にどうしても就きたい」くらいでしょうか。医局を辞めたいと思うような方で、そんなことを思う人は少ないと思うので、実質問題ないはずです。
勤務医として臨床をしていくのであれば、医学博士はなくても問題ないでしょう。
博士があるから食っていける、というのはレアケースかと思います。
その他にも、
開業したいから医学博士があった方が箔がついていい
という方もいるかもしれません。
確かに、ご高齢の方は、若年・中年層に比べて、「医学博士」のようなわかりやすい肩書きへの信頼感が強い方は多くいらっしゃる印象です。
ただ、昔から『医学博士は足の裏の米粒』と言われてきているということを考えると、案外そうでもないかもしれません。
そのため、自分が開業する場合、どの世代の患者さんを主なターゲットとしているのか?ということも絡んでくるでしょう。
ただ、ご高齢の方以外は医学博士を持っているか否かをそれほど重要視していないことが多いです。
肩書きよりも「説明がわかりやすいか」や「親身になって話を聞いてくれるか」ということの方を重要視しているケースが多いのではないでしょうか。
ですので、医学博士がなく開業することはそれほど問題にならないと思います。
それよりも、医師としての総合力や経営の手腕の方が大事だと考えられます。
流行っているクリニックで院長が医学博士を持っていない、なんてケースはいくらでもあります。
というよりもむしろ、私調べではありますが、流行っているクリニックの院長に関して、医学博士を持っていないケースの方が圧倒的に多いです。
この世は実力社会です。
肩書き一つでどうにかなるほど甘くないです。
「医学博士を持っていないけど腕が良くて信頼できるドクターのいるクリニック」
と
「医学博士は持っているけど『この医者本当に大丈夫か?』と思わせられるドクターのいるクリニック」、
あなたはどちらにかかりたいですか?
それに、「どうしても学位、医学博士が欲しい」という方には社会人大学院という手もありますしね。
また、もっと言うと、“大学院の卒業時にそもそも学位を取れるのか”という問題もあります。
私の所属していた医局では、よっぽどのことがなければ学位を取れる状態にありましたが、
一方、大学時代の友人が所属している医局では、
・そもそも大学院に4年通って医学博士が取れるのは2人に1人程度(※生活が苦しいのでバイトに明け暮れるようになると研究が進まず高確率で学位が取れない)
・もし4年で学位を取ることができなかった場合、「学費を払うのでもう1年居させてください」と懇願しても許可されず強制的に辞めさせられる
・結果、学位は持っておらず、臨床経験も(院にいたので)同世代に比して乏しい、という医師が高確率で輩出される
という地獄のシステムが構築されているようでした。
また、中にはあと少し(数ヶ月〜1年ほど)頑張れば医学博士が取れる、という状況の方もいるかもしれません。
しかし、大切なのは過去ではなく、現在とこれからの人生です。
人間には、これまでにかかった費用や労力を過大に見積もりがち、というサンクコスト(埋没費用)バイアスがあります。
サンクコストに囚われるあまり、医局を辞めたいのに辞められず、貴重な現在と未来を浪費し続けるのはあまりにもったいないと言えます。
時間は有限です。
有意義な投資対象にベットしてください。
医局を辞める際は円満に。喧嘩別れは良くない。
医局を辞める際はできる限り円満に、トラブルなく退局されることをおすすめいたします。
前述の通り、医師の世界は狭い世界です。
辞める時は精神的に追い込まれていて、
どうせ辞めるんだしもうどうにでもなれ!
という気持ちになっていることもあるかもしれませんが、それは少し危険な考え方のように思います。
辞める時の印象が悪いと、何よりお互い気分が良くないですし、悪評が立ってしまう可能性もあります。
円満に辞められるのであれば、それに越したことはないです。
辞めた後も、所属していた医局の教授などに印鑑をもらわなければならない場合や、患者を紹介する必要がある場合など、何らかの関わりを持つこともあるでしょうし。
医局を辞めて後悔はないのか?
医局を辞めたことを後悔している人は少ないと思われます。
医局を辞めて、やっと本来の自分を取り戻せたり、新しい職場で自分らしさを発揮しながら仕事をできる、ということの方が多いでしょう。
個人的にも、後悔は全くありません。
むしろ、後悔するようなことがないと思えたから、辞めるという選択に踏み切りました。
医局を辞めて、「こんなにも自由なんだ!」と実感しています。
やっと人生の本番が始まったような感覚です。
それに、もし仮に少しくらい後悔することがあったとしても、辞めたことで得られたメリットの方が、辞めずに医局に所属し続けた場合のデメリットを上回るのであれば、それは合理的な選択だったと言えるのではないでしょうか。
何があるかわからないのが人生です。
100点満点、完璧な選択肢などありません。
その時その時自分が最善と思える選択を取り、必要に応じて進むべき道を修正していけばいいと思います。
受験勉強と違い、人生の選択肢に正解や不正解は用意されていません。
「正解か不正解か」ではなく、我々は「あの時の決断が正解だった」と思えるように、毎日を生きていくことしかできないのです。
医局を辞めても医局に迷惑がかからないか心配な方へ
真面目で責任感の強い先生は、
自分が辞めて医局に迷惑がかからないか?
医局の業務が回らなくなるのではないか?
とご心配されることもあるかもしれません。
でも心配はご無用です。
あなたが辞めても医局は回ります。
労働市場には流動性があります。
あなたが辞めて人員が不足しているのであれば、医局側は新たな人員確保や体制の変更に動くはずです。
それに、仮にあなた一人が辞めるくらいで破綻するようなシステムなのであれば、それはシステムを構築する側の医局の管理者の責任です。
その責任をあなたが背負い込んで、あなたの人生を犠牲にする必要はありません。
あなたが辞めなくても、遅かれ早かれ体制は破綻するでしょう。
最後に
以上、私が医局を辞めた体験談や、医局を円満に辞める方法、医局を辞める上で気になることをみてきました。
最後までお読みいただきありがとうございます。
医局を辞めるか迷っている方や、辞めたいけどどうやって辞めたらいいかわからない、そんな方の参考になれば幸いです。
どうか、自分の人生の主導権を取り戻してください。
応援しています。
なお、医局をやめるにあたっては、事前に転職先の目星をつけておくことが重要です。
転職先を探すなら、↓以下のサイトがおすすめです。
実際にサイトを使ったり、エージェントに連絡を取ってみての感想を載せています。
「家電は買いたい時が買い時」という名言がありますが、医師の転職も同じです。
ちょっとでも「今の所を辞めようかな」と思ったら、その日から求人を見るなり、転職活動を開始した方がいいです。
日頃から求人を見ておくことで、仕事内容の違いや給料の相場がわかってきますし、
こんなはずじゃなかった…
と転職してから後悔する確率を大幅に減らすことができます。
行動しないと何も変わりません。
あなたがストレスなく、輝ける職場への転職をされることを願っています。
医師のおすすめ転職サイトはこちら↓
【医師のおすすめ転職サイト(常勤編)(上からおすすめ順)】
常勤で求人を探す場合は、信頼できる少数のサイトに絞って(多くて3つくらい)探していくのがおすすめ。
たくさん登録しても全部見るのは正直大変なので。
求人数含め総合力の高さはもちろん、Web面談や電話面談にも対応◎
・常勤求人数14000件以上
・医師一人に担当が2人付く
(専任エージェントは全員医療経営士保有)
というのも強み。
一般的な条件の各科の求人はもちろん、「週4可」「産業医」求人などもしっかり取り扱いあり。全国対応。
サイトの見やすさ、使いやすさも良い。
業界最大級で求人数がとにかく多い。
車でいうトヨタ的存在。
自分が転職した時(&バイト探す時)はまずm3を見てた。
エージェントの質、サイトの操作性含めマジで非の打ち所がない。
敢えてデメリットを挙げるとすると、皆このサイト見てるから人気の求人には速攻応募殺到する、くらい。
・
「迷ったらここだけ見ておけ!」ってくらいおすすめ。
強みはシンプル。求人数と、エージェントの質(柔軟性と提案力)。
転職サイトに求めるものって、極論ここだけですよね。
皆様ここは登録しているかな、と思ってこの位置にしていますが、まだの人は是非。
このサイトにしか出ていない求人もあるので、ここで求人探して損はないです。
ぶっちゃけそれほど取り扱い求人数は多くないが、自分のペースで働きたい人向けの求人など、ニッチな求人に強い印象。
非常勤求人にも対応。
求人の紹介ってだいたいメールで1-2回紹介してきて、いいところがなかったらその後はむこうからはあまり紹介してくれなくなる、みたいなパターンが多いが、ここは暇だからなのかは知らないが、(希望すれば)エージェントがめげずに気長に求人を紹介してくれる。
時間があまりない、探すの面倒くさい、みたいな人におすすめ。
【医師のおすすめアルバイト(非常勤・スポット)紹介サイト(上からおすすめ順)】
バイトは常勤の場合と違って、「数撃ちゃ当たる」で、できる限り多くのサイトで求人を探すと自分に合う案件に出逢える確率が高まります。
一つのサイトにしか求人を出さない医療機関はたくさんあるので。
非常勤、アルバイト探しも盤石の業界最大級。さすが車でいうトヨタ。
自分もバイト探す時はまずはここで探してます。
求人数、豊富さともにトップクラス。
実体験としてエージェントが基本即レスしてくれるのも心地良い。
常勤求人同様、求人数・質もバランス良く、重宝する。自分も良く利用する。
バイトをしたい後期研修医の先生は医賠責をここから申し込むとお得。自分もそうしてます。
正直エムスリーと甲乙つけがたい。
求人数も負けていない。
実は自分も後期研修中のある時までこのサイト知らなかったんですが、初めて見つけた時「もっと早くこのサイトと出会いたかった…」ってなりました。
リクルートなので知名度的にも安心感あり。
自分で使ってみた感想としては、エージェントがマメで定期非常勤とか良い所見つかるまで(希望すれば)気長に付き合ってくれるので好印象。