医師にとって、
「医学博士(学位)は必要か?大学院には行った方がいいのか?」
この点については、医師であれば一度は考えたことがあるかもしれません。
医学博士は昔から、
「足の裏の米粒」(=取っても食えない、だけど取らないと気持ち悪い)
と言われますが、実際はどうなんでしょうか。
文部科学省 科学技術・学術政策研究所ライブラリという所が出しているレポート『博士人材追跡調査-第4次報告書-』によると、医学部以外の学部を含めてにはなりますが、
我が国の博士課程入学者数は、2003 年度の 18,232 人をピークに 2019 年 度には 14,976 人まで減少した
博士人材追跡調査-第4次報告書-
とあります。
医師の博士課程入学者数に関しても、おそらく例外ではないでしょう。
もちろん、博士課程の入学者数の減少に関して、学生人口の減少が一つの要因であるとは思いますが、それ以外の要因もあると考えています。詳細は本編で述べています。
本記事では、
・大学院に行った方がいいのか悩んでいる先生
・『大学院には行かなかったがそれでよかったのか?』と思っている先生
・大学院にもう入っちゃったけど、『こんなはずじゃなかった…』と毎夜一人枕を濡らしている先生
に向けて、
・そもそも、医師にとって医学博士(学位)は必要なのか?
・医学博士取得のメリットとは?
・医学博士取得にかかる金銭的・時間的・機会的コスト
・医学博士取得に向いているのはどのような人か?
・なぜ医師の博士課程入学者数が減っていると考えられるのか?
といった気になるところを中心に、考えていきたいと思います。
今「大学院に行くべきかなのか悩んでいる先生」については、論点を整理することでスッキリしてもらえると思いますし、今後の決断の際の参考としていただければと思います。
また、「『大学院には行かなかったがそれでよかったのか?』と思っている先生」についても、ご自身の決断が間違っていなかったと再確認していただけるような内容になっているかと思います。
「大学院にもう入っちゃったけど、『こんなはずじゃなかった…』と一人枕を濡らしている先生」については、本記事が、今後あなたがよりよい選択をしていくための指針となることを願っています。
それだけでなく(ここから重要)、
「本来大学院に行かない方が良かったはずの先生」が
・何となく、よく考えないままに
・周りに合わせて
・よく知らないけど、とりあえず行くものなんでしょ?
等の事情で大学院に入ってしまうことで被る損失は計り知れません。
その損失とは、金銭的な部分のみに留まりません。
時間的損失、キャリア・機会費用も含みます。
そんな、本来大学院に行かない方が良かったはずのドクターを一人でも“未病”の段階で救うべく、
あるいは、
そんなドクターにせめて考えるきっかけくらいは持ってもらいたい、といった想いで本記事を書いています。
そして、何を隠そう、私自身が経験者だからこそわかることを、たくさん盛り込みました。
念の為言っておくと、私は、「自分が行かなかった大学院なんて意味ない」と合理化(=酸っぱいブドウ)しているわけではありません。
私自身は大学院に行ったのですが、行った率直な感想として、
大学院は自分にとって本当に必要だったのか?
大学院が必要があるとしてもそれは限られた人に対してだろうな。
という実感を持っているからこそ、この記事を書いています。
大学院に行った人間だからこそ言える、医師が大学院に行くことの是非について述べています。
それでは、本編に行きましょう。
医学博士(学位)取得によるメリット
まず、医学博士(学位)は必要かどうかを考える上で、重要なポイントは、
医学博士(学位)を取ることでメリットがどれだけあるか、
ということになるかと思います。
医学博士取得によるメリットとして、何が挙げられるでしょうか。
・教授や公的病院の部長になる際には必要
・アカデミックな世界でやっていく、大学に残りたいなら必要
・研究をした実績や能力の証明になる
・箔がつく
ざっと挙げてみると、こんな感じでしょうか。
医学博士の必要性が高い人とそうでない人
教授や(公的病院の)部長になりたい人や、ずっと研究に携わっていたい人にとっては医学博士(学位)は必要性は高いと思いますが、逆に”そうでない人”にとっては、積極的に取るべき理由はなさそうです。
医学博士(学位)を持っていても、病院に就職する際もとりわけ有利になる、というわけでもありません。
少しはポジティブに作用することもあるのはあるでしょうが、医学博士を持っているからどこの病院にも余裕で就職・転職できる、と言えるほどの効果はありません。
医学博士を持っていると、一定の能力の証明になる?
また、医学博士(学位)を持っていると、4年間の大学院生活や研究生活を乗り越え、研究成果を論文化できるだけの忍耐力と能力を有していることの証明にはなるとは思いますが、能力の証明の仕方は、他にいくらでもあるので、この観点においても、医学博士はマストとは言えません。
実際、種々の事情により、大して研究はしていなかったものの、
・教官が代わりに論文を書いて学位を取らせてあげた
・他の医局員が汗水垂らして出したデータを使って、サクッと学位を取った
なんて話も聞きますので、このような場合は、学位はただ持っているだけ、のお飾りに過ぎません。
かく言う私も、実体験として他の医局員のために時間をかけて実験をして、データを出して渡したことがありますし。
もちろん、医局に命じられて、です。
もし仮に形だけ取得した学位を振りかざして何らかのポジションに就いたとしても、そのうちメッキは剥げるでしょう。
医学博士を持っていると転職時に有利?給料は上がるのか?
それに、医学博士(学位)を取得したからといって、臨床医に戻った時にわかりやすく給料が上がるわけでもありません。
疑り深い方は、一度転職サイト等で、医学博士の有無により給与・待遇が変わる求人がどれだけあるか見てみてください。
「ない」
、あるいは
「あっても非常にレアケースだ」
ということがおわかりいただけるかと思います。
そういった意味で医学博士(学位)はまさに「取っても食えない」のです。
「医学博士(学位)は足の裏の米粒」とは、言い得て妙です。
最初にこれを言った人、天才だと思います。
将来的に開業を考えている人は、その際に医学博士を持っていると箔がついて良い?
その他にも、
開業したいから医学博士があった方が箔がついていい
という方もいるかもしれません。
確かに、ご高齢の方は、若年・中年層に比べて、「医学博士」のようなわかりやすい肩書きへの信頼感が強い方は多くいらっしゃる印象です。
ただ、昔から『医学博士は足の裏の米粒』と言われてきているということを考えると、案外そうでもないかもしれません。
そのため、自分が開業する場合、
「どの世代の患者さんを主なターゲット」としているのか?
ということも絡んでくるでしょう。
ただ、ご高齢の方以外は医学博士を持っているか否かをそれほど重要視していないことが多いです。
肩書きよりも「説明がわかりやすいか」や「親身になって話を聞いてくれるか」ということの方を重要視しているケースが多いのではないでしょうか。
また、こんなこといったら元も子もないのですが、そもそも大学院には行かずに、その4年間で臨床経験をバリバリ積んだ方が、開業してから役に立つスキルを身に付けることができる可能性が高いとも思います。
目の前の患者さんにとっては、「高尚な理論を知っているか」よりも「ちゃんと病気が何か見極めてくれて、治してくれるかどうか」の方が大事です。
さらに、今の時代は、医学博士という肩書きよりも、ドクターの腕はもちろんのこと、クリニックのブランディングであったり、SNSやSEO(検索エンジン最適化:平たく言えば、検索で上位に出てくること)を駆使してうまく集患できることの方がはるかに重要になってきています。
ですので、医学博士がなく開業することはそれほど問題にならないと思います。
それよりも、医師としての総合力や経営の手腕の方が大事だと考えられます。
流行っているクリニックで院長が医学博士を持っていない、なんてケースはいくらでもあります。
というよりもむしろ、私調べではありますが、流行っているクリニックの院長に関して、医学博士を持っていないケースの方が圧倒的に多いです。
この世は実力社会です。
肩書き一つでどうにかなるほど甘くないです。
「医学博士を持っていないけど腕が良くて信頼できるドクターのいるクリニック」と
「医学博士は持っているけど『この医者本当に大丈夫か?』と思わせられるドクターのいるクリニック」、
あなたはどちらにかかりたいですか?
前者ですよね。
あなたも、『確かに昔は頑張っていたのかもしれないが、知識をアップデートせずにいつまでも化石のような診療をしているドクター』に遭遇したこと、一度や二度はあるんじゃないでしょうか。
医学博士(学位)取得にかかる時間的・金銭的・機会的コスト
では、続いて、医学博士(学位)取得にかかるコストについて考えてみます。
コストといっても、金銭的な部分だけではありません。
医学博士を取るために大学院に行くには、膨大な時間(4年かそれ以上)と労力がかかります。
また、「その時間をもし他のことに使えたら?」という意味で、機会的コスト(機会費用)もかかります。
順番に述べていきます。
時間的コスト
まず、時間としては、大学院卒業までに4年間は必要です。
(※論文博士という手もありますが今回は割愛します)
30歳前後で大学院に入る人が多いでしょうから、貴重な30代前半を研究に捧げることになります。まずこの点は非常に重要かと。
また、研究となると、(一部の天才的な人を除いて)ちょろっと研究をして結果を出せるほど甘い世界ではありませんから、多くの時間と労力を研究に投じる必要が出てきます。
私の場合は、平日は主に医局に命じられた雑用ありがたいお仕事で持っていかれ、自分の研究・実験は土日にやらざるを得ないこともありました。
また、大学院に行くと、無事4年で学位を取得できたとしても、研究生活自体は4年では終わらないこともあります。
それは、学位を取るための論文は書いたものの、そこにさらにデータを加えて、よりしっかりとした内容の論文を海外ジャーナルに投稿することが求められるケースです。
自らの主張を、より堅牢なものにするために、追加実験が必要になることがあります。
この場合、ポスドクとして大学に残って、臨床をしつつ、研究や論文執筆を続けていくことになります。
もちろん、学位を取得した段階で、
外に出ます!さいなら!
と言える人はいいですが、
いずれ医局の関連病院に行きたい。そのためには医局に歯向かうわけにはいかない…
などという方もいるでしょう。
また、大学院を卒業する頃には
せっかくここまでやったんだからより説得力のある内容に仕上げたい
という気持ちが芽生えているかもしれませんしね。
金銭的コスト
また、金銭的なコストとしては、大学にもよるとは思いますが、入学金と4年間の学費を合わせると
200万円以上
は必要です。
金銭面に関してさらに言うと、思考の俎上に載せるべきは学費として必要な金額だけではありません。
「大学院に入っていなければ稼ぐことができたであろう額」と、「大学院時代に稼いだ額」の差額も考慮に入れなければなりません。
30代の医師であれば、バイトを含めて外で臨床医として働けば1000万円〜1500万円を稼ぐことはそれほど難しくないでしょう。
それが、大学院に入ると、学費を払う上に、研究時間確保のために外勤もバンバンできるわけではないので、同世代で普通に臨床をしている医師と比較すると、経済的には非常に苦しくなります。
外勤ができるのは丸1日、もしくは別日に1コマずつの合計2コマだけ、という状況であれば経済的には非常に苦しいです。どれだけ外勤ができるかは医局にもよると思いますが、だいたいこんな感じかと思われます。
それ故、土日に自分で探したバイトをしているドクターも多かったです。私もしていました。
仮に、大学院に入ってちょこちょこバイトをした時の年収が800万円で、大学院に行かずに病院やクリニックで臨床医として働いた時の年収が1200万円だったとしましょう。
そうすると、学費の200万円に加えて、年収の差額400万円/年×4年=1600万円を合わせると、1800万円の経済的損失が見込まれます。
こういうことを言うと、
博士を取ったら取った後でそのコストが回収できるだろう。そんな短期的に物事を考えているわけじゃない
という反論も飛んでくるかもしれませんが、前述の通り、医学博士を取ってもわかりやすく収入がアップする、ってことは多くの場合ありません。
話を戻します。
大学院に行った時の年収や、外で臨床医として働いた時の年収が上記の額と異なる場合は、ご自身で試算してみてください。
いずれにしても、その差額は大きなものとなるはずです。
(もし年収が大学院 : 600万円 vs 臨床医: 1500万円だとしたら、学費200万円 + 差額900万円/年×4年 = 3800万円の損失です。
大迫選手並みに半端ないです。
3800万円あったら何でも買えますし、何年か働かなくても生きていける額です。その他、インデックスにぶち込んでおくだけでも結構良い感じです
※実際には税金がかかります)
知り合いでも大学に入って
子どももいて出費は増える一方なのに、とにかくお金がない…
と嘆いているドクターがいますが、
「そりゃそうでしょ」って話です。
もちろん、
俺は金のために医者をやってるんじゃない!
とか、
稼ぎは低くても俺はその分大学院で大切なものを得ているんだ!
というロードオブメジャー顔負けのご意見をお持ちの方もいるかもしれませんが、そういった方はどうぞご自身の道を邁進してください。
(というか、そんな方はこの記事読んでないと思います…)
ただ、上記の経済的な損失の話を聞いて、
確かにそうだな…
研究するより金をくれ!
と少しでも思う方は、大学院に入ることを真剣に考え直した方がいいかもしれません。
機会的コスト(機会費用)
また、時間的・金銭的コスト以外にも、臨床の経験についても考慮する必要があります。
大学院に入る間も外勤などで臨床をすることはできますが、市中病院でバリバリ臨床をする場合と比べると、経験は限られるでしょうから、こと臨床的経験という意味では一定の機会損失は想定されます。
その他、臨床経験以外についても考えてみると、4年という時間は極めて長く、重要な意味を持ちます。
「その時間を他のことに使っていたら?それでどれだけのものが得られるか?」
ということについても考えを巡らせてみるといいと思います。
(医学に限らず)新しい分野を学び始めたとしたら、4年もあればその道の立派な大家といえるくらい詳しくなることもできるでしょうし、ビジネスを立ち上げたら、4年後にはビッグビジネスになっているかもしれません。ゴルフにフルベットして、プロ並みの腕前になる人もいることでしょう。
要は、
“4年もあれば何でもできるようになっている可能性を秘めている”
“それだけの時間を研究漬けの日々に費やす覚悟はあるか?”
ということです。
自らの持つ、有限で、二度と戻らない何よりも貴重な資産である時間とエネルギーを何に使うのか、よく考えた方がいいかと思います。
大学院を卒業して落ち着くまで結婚は待つか…
って人もいましたし。
もちろん、研究をすることにより得られる種々の能力(基礎への理解、論理的・科学的思考力、統計的な解析力、論文作成をする力、英語力、忍耐力等)もあるでしょうし、それが後に臨床に戻った時に活きることもあるでしょうから、この点については一概にどちらがいいとかは言えませんが。
そもそも4年で学位を取れるのか問題
また、もっと言うと、
“そもそも、大学院に4年行ったら学位を取れるのか”
という問題もあります。
学位の取りやすさは所属する医局によって様々です。
私の所属していた医局では、よっぽどのことがなければ学位を取れる状態にありましたが、
一方、大学時代の友人が所属している医局では、
・そもそも大学院に4年通って医学博士が取れるのは2人に1人程度
(※生活が苦しいのでバイトに明け暮れるようになると研究が進まず高確率で学位が取れない)
・もし4年で学位を取ることができなかった場合、「学費を払うのでもう1年居させてください」と懇願しても許可されず強制的に辞めさせられる
・結果、学位は持っておらず、臨床経験も(院にいたので)同世代に比して乏しい、という医師が高確率で輩出される
という地獄のシステムが構築されているようでした。
もし自分がそうなったら、と思うとゾッとします。
その他、教授に上納金を納めなければ学位が取れない医局がある、なんていうのもちょっと前にニュースになっていましたよね。最近は流石に減ってきているのかもしれませんが。
また、教授は良くても環境や指導体制に恵まれない、ということもありますしね。
「予算がないとどうしようもないよ」ってこともあるでしょうし。
医学博士(学位)取得の是非を合理的に考えてみると
上述の通り、医学博士(学位)は取得しても、一部の人を除いてそれほどメリットははっきりしないものの、取得するとなるとかなりの時間的・金銭的・機会的コストを要することがわかります。
これらを純粋に天秤にかけると、普通に考えると「医学博士(学位)を取得するのはコスパが悪い」ということになるでしょう。
しかし、それでも医学博士(学位)を取得する人はいますし、取りたい方は取ればいいと思います。
私が言いたいのは、「大学院には行くな」ということではなくて、しっかり考えて、酸いも甘いもわかった上で、それでも大学院に行きたいと思える人だけが行くべきだ、ということです。
とりあえず行くか、みたいなスタンスだと大やけど(“Ⅲ度熱傷”と言った方がドクターには伝わりやすいでしょうか)すること間違いなしです。
医学博士(学位)はゴールではなく、研究をする過程で自然に取得するもの
上記のごとく、コスパで考えたら、医学博士(学位)は取るべきと言えるようなものではないと思います。
かなり雑な言い方をすれば、取らない方が合理的という言い方が当てはまる人の方が多いと思います。
しかし、医学博士(学位)を取得するような方は、医学博士(学位)そのものがゴールというわけではなくて、医学博士(学位)を取る過程の方に重きを置いている人の方が多かったです。
「医学博士(学位)を取ってその資格を存分に活かしたい」というよりも、
研究頑張ってたら道に医学博士が落ちてたから、あえて拾わない理由もないし、取っとくか
ぐらいの感じなんじゃないでしょうか。
周りにいた医師を見ていてもそういった傾向がありました。
そういった人たちにとっては、医学博士(学位)取得をコスパで考えること自体馬鹿げている、ということになるのかもしれません。
医学博士(学位)はコスパや取得にかかる種々のコストを度外視してでも取りたい理由のある人や、自然と取れる状況になった人が取得すべきであって、
「医学博士(学位)のメリットは何か?」
「医学博士(学位)は取るべきか?」
と考えたり、迷うような人は、そもそも取得に向いていないように思います。
「必要」という字を文字通り「必ず要る。なくてはならない」という意味と解釈すると、多くの勤務医にとって医学博士は、「必要ではない」ということになるかと思います。
冒頭で医学博士取得者が減少傾向であることに触れましたが、それは、単に学生人口が減少しているだけでないと思います。
「医学博士は取って当たり前」であるとか、
「周りも皆医学博士を取るって言ってるからそういうものだと思っている」という時代から、
医学博士って取っても意味ないよね
と感じる人が増えたり、
医学博士ってそもそも必要なの?
ということに気付き、立ち止まって考えられる人が増えた結果だろうと考えています。
かつては皆が信じていた「終身雇用、年功序列」制度が崩壊したのと似ていますね。
すでに大学院に入ってしまったが、続けるべきか迷っている人は?
ここまでお読みいただいた方の中には、
大学院がダルいのは嫌というほど知ってる!でももう大学院に入っちゃったよ!
という方もいらっしゃると思います。
ここまでやってきたし、今更辞めるのもなあ…
そう考えたくなる気持ちもわかります。
しかし、大切なのは過去ではなく、現在とこれからの人生です。
人間には、これまでにかかった費用や労力を過大に見積もりがち、というサンクコスト(埋没費用)バイアスがあります。
サンクコストに囚われるあまり、医局を辞めたいのに辞められず、貴重な現在と未来を浪費し続けるのはあまりにもったいないと言えます。
時間は有限です。
有意義な投資対象にベットしてください。
そうは言われても、それでも迷う
という方は、例えば、大学院生活が残り2年だとして、一度仕切り直して、残りの学費で、新しくその2年の学校(大学院)に入り直すか?、とフラットな気持ちで考えてみてください。学費だけでなく、残り2年を大学院に費やすに値するか、ということも考えてみてください。
もしくは、客観的に考えるために、
“自分と全く同じ状況に置かれているドクターの悩み相談を受けたとして、自分だったらどのように考えるだろうか、どうアドバイスするだろうか”、
を考えてみるのも有益です。
人は、他人のことであれば冷静に、合理的に判断することができても、自分のこととなると、途端に視野狭窄に陥りがちです。
(例:健康診断を受けない医学生は多いですし、医師が自分に何か体調の変化があっても、すぐには受診せずに働いてしまう、とかです。心当たりないですか?)
それ故、上記の思考実験において、
いや、なんでそんなことで迷ってるんだよ。絶対辞めた方がいいよ
と自分がアドバイスするのであれば、大学院を辞めて、新たな一歩を踏み出した方がいい、ということになるでしょう。
ここで念の為言っておくと、別に私はあなたに大学院を何が何でも辞めて欲しいわけじゃないです。
ただ、冷静に考えたら「辞めたい」と思っているのに、サンクコストに囚われるあまり嫌々大学院に通い続けて、精神や肉体を病んでしまう方を減らしたい、と思っているだけです。
おわりに
本記事では、「医学博士(学位)は必要か?」という問いに関して、個人的な見解をお示ししてきました。
個人的には、よほど取得すべき理由のある人や、「医学博士(学位)がすぐ近くに落ちてるから取っとくか」というテンションの人以外にとっては、必要ではないと思います。あくまで個人の見解ですが。
皆様が後悔のない選択をされることを願っています。
本記事をお読みの方には、
大学院に行くのはやっぱりやめた!
今大学院にいるけど中退しようかな
大学院にいるけど卒業したら医局を辞めよう
など、色んな方がいらっしゃると思いますが、
ちょっとでも医局以外の選択肢を考えておられるのであれば、早めに求人を見ておくと良いと思います。
なんとなくもやもやしているだけだと状況は何も変わりませんが、一つひとつ行動を起こしていくと次にやるべきことが明確になって、事態が打開されていくと思います。
大学病院以外の職場を探すなら、以下のサイトがおすすめです↓
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求人数も負けていない。
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リクルートなので知名度的にも安心感あり。
自分で使ってみた感想としては、エージェントがマメで定期非常勤とか良い所見つかるまで(希望すれば)気長に付き合ってくれるので好印象。
医師の大学院生活については、↑こちらの記事も参考にしてみてください。